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皇帝カルロス!

16世紀ヨーロッパに君臨した神聖ローマ帝国皇帝カルロス5世ファンのブログ。

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マクシミリアン皇帝のプロパガンダ


「ドイツ・ネーデルラントの近世版画ーマクシミリアン1世の時代を中心にー」
東京芸大大学美術館 展覧会カタログ

マクシミリアン皇帝は、「中世最後の騎士」と呼ばれるように、兵士達からも慕われた戦場が好きな行動派の君主であり、どうも体育会系な人のイメージがあります。しかし、その一方で芸術や文化を愛したフマニスト(人文主義者:ルネサンス期の文化人たち)の庇護者でもあり、自らも音楽や詩作をたしなむことがあったようです。
この展覧会カタログは2004年に開催された(私は残念ながら見ていませんが)、マクシミリアン帝時代の版画についてのものです。とくに興味深いのは、皇帝自らが企画し芸術家たちに制作を依頼したいくつかの版画集の一つ「白王伝」が取り上げられていることです。

前回デューラーの本を取り上げたましたが、彼はマクシミリアン帝のもとで活躍した画家の一人であり、当時ドイツで盛んになった木版画を中心とした版画芸術の第一人者でした。彼を始めとした多くの芸術家が皇帝のもとで創作活動を行ったのですが、皇帝はこの(木)版画という新しいメディアに目をつけ、帝国臣民に対する自らのイメージ戦略の一つとして活用したのです。

「白王伝」は皇帝の生涯を土台にした騎士物語で、レオンハルト・ベックやハンス・ブルクマイアといった画家達によって制作されました。物語には皇帝自らが執筆に携わったと言われています。現代のタレント本といったところでしょうか?
しかし、マクシミリアン帝だけでなく父フリードリヒ帝の生涯から描かれるなど企画が壮大であったこと、そして皇帝が校正をいれるたびに内容に修正が加えられたこと、また、同時進行で他にもいくつもの出版プロジェクトが動いていたことなどから、皇帝の存命中には出版が実現されなかったといういわくつきの版画集だったようです。(実際に出版されたのは18世紀になってから。マリー・アントワネットの実兄、ヨーゼフ2世帝による)

作品は白王(=マクシミリアン帝)の生涯に起こる様々なエピソードの一場面が版画になっていて、それはほぼ史実にもとづいた出来事を題材にしています。展覧会ではその一部20点が取り上げられていたようです。(総数は251点の版画集!)白王の顔をよく見ると、皇帝の肖像画に見られる彼独特の「鷲鼻」で人物が描かれており、皇帝自身の描写であることが窺われます。
ほとんどが白王が如何に苦難を乗り越え栄光に満ちた治世を行ってきたかを描いた内容であり、さすがにうんざりするような気がしますが、皇帝自らが細かく手を加えながら作り上げたと聞くと、憎めないような気もしてきます。(「ここはもっと余に似せよ!」とか指示だしたか?)
ルネサンス期は多くの権力者がお抱えの芸術家を持ち、自らの権勢を美術作品の制作によって誇った時代でしたが、マクシミリアンは単に素晴らしい芸術品としてだけでなく、情報戦略として自らのプロパガンダ用に版画を利用しようと考えていたのでしょうか。先駆的だったのか、それとも単に目立ちたかっただけなのか!

ちなみにトップに掲載した画像は、カタログの表紙なのですが、王に書物が献上される場面が描かれています。この書物が「白王伝」であり、この王は孫の皇帝カルロスなのです。この作品はマクシミリアン帝が亡くなるまでに完成を見なかったわけですが、その後のことまで描かれ続けていたのですね。

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