2014年6月19日、前国王ファン・カルロス1世の譲位により、
スペイン新国王フェリペ6世が誕生しました。
写真は6月18日にマドリードの王宮で行われた退位式。
写真左側に並ぶ人物は・・・
左からソフィア前王妃、フェリペ新国王、カルロス前国王、レティシア新王妃。
ちなみに、写真右にはレオノール新王女、ソフィア新王女の姿も。
ところで、写真左側のソフィア前王妃の後ろにそびえる彫像は・・・
もしかしてカルロス皇帝陛下???
われらがカルロス皇帝陛下は、今より時を遡ること約460年前、
1555年10月25日にブリュッセルで退位式典を開き、
息子フェリペにスペイン国王の位を譲位することを表明しました。
ルイ・ガレによる退位式を描いた絵画。
中央に黒衣をまとった皇帝カルロス5世。
皇帝の足下に跪いているのはフェリペ2世。
皇帝が肩に寄りかかっている相手は寵臣オラニエ公ウィレム。
そして、皇帝の左に座っているのが妹のマリー総督。
現代のスペイン王家はブルボン家の一族なので、
ハプスブルク家のカルロス皇帝とはつながってはいません。
ですが、同じくスペインの君主であり、
父カルロスから息子フェリペに譲位、
という共通項を勝手に記念してブログに特集してみました。
ファン・カルロス前国王は、退位の署名をあっさりと済ませ、
式典自体(翌日のフェリペ新国王の即位式も含め)も簡素だったようです。
一方、カルロス皇帝は大勢の貴族が集った式典でこれまでの統治を振り返り、
「感動的であった」と伝えられる演説を行っています。
以下、当時の演説からいくつかの抜粋を記載します。
果たして、現代に通じる部分はあるでしょうか。
「余が皇位を求めたのは、多くの国を支配したいというよこしまな野心からではなく、余の愛する国ドイツやその他の国々、とくにフランドル諸国の利益のため、キリスト教世界の平和と協調のため、そして、トルコに対するキリスト教の勢力拡大を目指して余と余のすべての王国の力を結集するためである。」
「余は九度ドイツに行き、六度スペインで、七度イタリアで過ごし、十度フランドルへ来て、平時と戦時の四度フランスに、二度イギリスに入国し、二度アフリカに赴いた。そのために八度地中海を、三度スペインの大洋を航海してきたし、隠遁場所のスペインに行くために四度目をまもなく経験するであろう。それ故に、計十二回にわたる船旅の煩わしさや労苦を蒙ることになった。」
「余は神が許されたことをなした。それは、戦争が人間の手中にではなく神意にあるからである。我々はその資力、力、才能に応じて行動し、神が勝敗を決められる。余は最善をつくし、神は余を助けてくれた。それ故に、大きな労苦と危険がある時に、我々をつねに助けてくれた神に厚く感謝せねばならない。」
「余の行ってきた統治に関していえば、若気の至りや経験不足に惑わされたり、人間のもつ弱点の故に、しばしば誤りを犯してきたことを告白する。余はわが臣民にいかなる危害も加えなかったし、それを許さなかったことを確認したい。それ故に、危害を受けたと苦情を述べる者がいたとしても、これは、余の知らぬ間か、余の意志に反してなされたものであることを明言したい。このような過ちや余への苦情に関しては、余を許してくれるよう、ここに臨席する皆様にお願い申し上げる。」
*出典 藤田一成著「皇帝カルロスの悲劇」平凡社選書